後継者を「争族」から守る!「遺留分の特例」とは?

8月に入り、お盆休みでご親族が集まる機会も増える時期ですね。普段はなかなか切り出しにくい「将来の会社のこと」や「財産のこと」を話し合うには、実は非常に良いタイミングです。

これまで数多くの事業承継や相続の現場を見てきましたが、会社を継ぐ後継者と、それ以外のご家族との間で最もトラブル(=争族)になりやすいのが「自社株の扱い」と「遺留分」の問題です。

今回は、社長の想いが詰まった会社を無事に引き継ぎ、後継者の努力を無駄にしないための強力な制度である「遺留分に関する民法の特例(除外合意・固定合意)」について分かりやすく解説します。

もくじ

事業承継における最大の壁「遺留分」とは?

「遺留分」とは、配偶者や子どもなどの法定相続人に、法律上最低限保障されている遺産の取得割合のことです。遺言書で「長男(後継者)に全ての自社株と財産を譲る」と書き残したとしても、他の相続人はこの遺留分を主張(遺留分侵害額請求)することができます。

ここで問題になるのが、自社株の評価額です。 業績が良い会社ほど自社株の評価額は高くなります。もし他の相続人から高額な現金を請求された場合、後継者は会社の資金や自らのポケットから多額の現金を捻出しなければならず、最悪の場合は会社の存続すら危ぶまれる事態に陥ってしまいます。

後継者を守る「除外合意」とは?

こうした事態を防ぐための制度の一つが「除外合意」です。

これは、生前贈与された自社株を「遺留分の計算から除外する」と、相続人全員で合意するものです。 この合意をしておけば、将来相続が発生した際、他の相続人は自社株に対して遺留分を主張できなくなります。つまり、後継者は「突然、多額の現金を請求される」という恐怖から解放され、安心して会社の経営に集中できるのです。

後継者の努力が報われる「固定合意」とは?

もう一つの強力な制度が「固定合意」です。

自社株を贈与された後、後継者が一生懸命働いて会社の業績を伸ばし、株価が上がったとします。原則的なルールでは、相続発生時の「値上がりした高い株価」で遺留分が計算されてしまいます。これでは、後継者の頑張りが裏目に出てしまい、請求される金額が膨れ上がってしまいます。

固定合意は、生前贈与時の「低い時点の株価で、遺留分の計算を固定する」という合意です。 これにより、贈与後にどれだけ会社の価値が高まっても、その増加分は後継者の努力の成果として守られ、遺留分の対象にはなりません。

制度を活用するための注意点と実践ポイント

この「除外合意」と「固定合意」は同時に活用することも可能で、事業承継においては非常に有効な手段ですが、利用にはいくつかのハードルがあります。

推定相続人「全員」の合意が必要

これが最大の難関です。一人でも反対すれば成立しません。日頃からのご家族同士のコミュニケーションや、他の相続人への配慮(代償分割のための生命保険の活用や、他の財産の分与など)が不可欠です。

経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要

単なる家族会議の口約束ではなく、法的な手続きと専門的な書類作成が求められます。

円満な事業承継は「早めの準備」と「チーム戦」で

「うちの家族は仲が良いから大丈夫」と思っていても、いざ相続が発生し、高額な評価額を目にした途端に関係性が崩れてしまうケースを、数え切れないほど見てきました。

制度を有効に活用し、円満な解決(争族予防)を導くためには、経営者ご自身の早めの決断と、親族間の丁寧な調整が不可欠です。また、自社株の評価から法的手続きまで、税理士や弁護士、司法書士といった専門家としっかりと連携を取って進める必要があります。

「自社株の評価額が分からない」「家族にどう切り出せばいいか悩んでいる」という経営者の方は、手遅れになる前に、ぜひ一度ご相談ください。会社の未来とご家族の笑顔を守るための、最適なプランを一緒に考えていきましょう。

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