親が認知症になると、銀行口座が凍結され家族でも預金が引き出せなくなるリスクがあります。本記事では、介護費用などの資金ショートを防ぎ、将来の争いを避けて「円満な解決」に導くための2大対策「生命保険」と「家族信託」のメリット・デメリットを専門家の視点で徹底比較します。
認知症で直面する「口座凍結」の現実
多くの人が誤解しがちですが、親が認知症になり判断能力が低下すると、銀行口座が凍結され、預金の引き出しや定期預金の解約ができなくなるリスクがあります。
たとえ実の子供であっても、親の医療費や介護費用を親の口座から下ろすことが難しくなり、家族が立て替える事態に陥るケースが少なくありません。このリスクを回避するための有力な選択肢が、「生命保険(指定代理請求制度・認知症保険)」と「家族信託(民事信託)」です。
生命保険(指定代理請求制度・認知症保険)の活用
生命保険を活用し、あらかじめ家族を「指定代理請求人」などに設定しておく方法です。また、認知症と診断された際に一時金が支払われるタイプの保険も増えています。
メリット
・手続きが極めてシンプル: 保険会社への加入手続きだけで完結し、初期費用を抑えやすい。
・納税・葬儀費用の確保に強い: 死亡時に確実にまとまった現金を家族に残せる(遺産分割協議の影響を受けない)。
デメリット
・生前の流動的な管理には不向き: あくまで「保険金の請求」というスポット的な対応であり、親の財産(預貯金そのもの)を子供が日常的に運用・管理することはできません。
・加入年齢や健康状態の制限: すでに認知症の症状が進んでいる場合は加入できません。
家族信託(民事信託)の活用
元気なうちに資産の「管理・処分権限」を信頼できる家族(子供など)に託す契約を結ぶ方法です。
メリット
・柔軟な財産管理が可能: 親の口座とは別に「信託口(しんたくぐち)口座」を作れるため、親が認知症になった後も、子供がその口座から医療費や介護費を自由に出し入れできます。
・不動産の売却も可能: 預貯金だけでなく、実家の売却なども子供の判断で行えます。
デメリット
・初期費用と手間がかかる: 公正証書の作成や専門家(司法書士や税理士など)への報酬など、数十万円単位の初期費用がかかるケースが多いです。
・親族間の合意が必要: 後々のトラブルを防ぐため、他の兄弟姉妹などにも事前に理解を得ておく必要があります。
比較まとめ:生命保険 vs 家族信託
| 比較項目 | 生命保険 | 家族信託 |
| 主な目的 | 万が一の際の一時金確保、葬儀・納税資金 | 生前の柔軟な財産管理・凍結防止 |
| 管理できる資産 | 現金(保険金)のみ | 現金・不動産・株式など幅広く対応 |
| 手続きの難易度 | 比較的容易(保険会社で完結) | やや複雑(契約書作成、専門家連携が必要) |
| 初期費用 | 低い(保険料のみ) | 高い(数十万円〜) |
| 認知症後の対応 | 保険金請求のみ代理可能 | 日常的な引き出し、不動産売却も可能 |
結論:どちらを選ぶべき?
生命保険が向いている人
「まずは手軽に、親の医療費や万が一の葬儀費用としてのまとまった現金を確保しておきたい」という場合。
家族信託が向いている人
「実家の売却予定がある、または親の預貯金を日常の介護費用として毎月スムーズに出し入れしたい」という場合。
どちらか一方だけでなく、「手軽な生命保険でベースの現金を確保しつつ、実家やメインの資産は家族信託で守る」という組み合わせ(併用)も非常に有効な戦略です。手遅れになる前に、家族で早めに話し合いを始めましょう。

