「先妻とはずいぶん前に離婚しているし、今の家族(後妻やその子供)と仲良く過ごしているから大丈夫」
そう思っていませんか?
実は、相続トラブル(遺産分割事件)において非常に相談件数が多いのが「被相続人(亡くなった方)に先妻との間の子がいるケース」です。
法律上、「先妻(元妻)」は法定相続人ではありません。しかし、「先妻との間の子」は、後妻との間の子と全く同じ割合の法定相続権を持ちます。
なぜこのケースが深刻なトラブルに発展しやすいのか、その問題点と生前に打てる対策を分かりやすく解説します。
なぜ揉める?3つの主な問題点
1. 関係性が薄く、感情的な対立が起きやすい
後妻やその子どもたちと、先妻の子は交流がほとんどないケースが一般的です。お互いに顔も見たことがない・どんな生活をしているか知らないという状態で、突然「相続人」として遺産分割協議を行うことになります。
関係性が薄い分、遠慮が効かなかったり、「亡くなった父への愛憎」「先妻側の感情」が複雑に絡み合い、感情的な対立へ発展しやすくなります。
2. 全員の「実印と印鑑証明書」がないと手続きが進まない
亡くなった方の銀行口座を解約したり、不動産の名義変更(所有権移転登記)をしたりするには、相続人全員による「遺産分割協議書」の作成と押印・印鑑証明書の提出が必須です。
たとえ99%の財産を現在の家族が守りたいと思っていても、先妻の子の協力(合意と押印)が得られなければ、預貯金を引き出すことすらできなくなってしまいます。
3. 不動産(持ち家)しか財産がない場合、遺産を分けられない
「財産は今住んでいる自宅の土地・建物と、少額の預貯金だけ」というケースは特に危険です。
先妻の子から法定相続分(例:数百万円〜数千万円規模)の金銭支払いを求められた場合、自宅を売却して現金化して分ける(換価分割)か、後妻側が自分の手持ち資金から現金を支払う(代償分割)しかなくなり、住む場所を失うリスクが生じます。
事前にできる有効な対策
先妻との子がいる場合の相続トラブルを防ぐためには、生前の準備が極めて重要です。
対策1:遺言書を作成する(最重要)
最も効果的な対策は、生前に遺言書を作成しておくことです。
遺言書があれば、原則として「遺産分割協議」を行わずに遺産を分配できます。つまり、後妻やその子が、先妻の子と直接協議をしたり、印鑑証明書を求めたりする必要がなくなります。
対策2:遺留分に配慮した財産配分にする
兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限受け取れる遺産の権利である「遺留分」が法律で認められています(法定相続分の半分)。
もし「現在の妻と子に全財産を譲る」という遺言書を作った場合でも、先妻の子から「遺留分侵害額請求」をされる可能性があります。最初から先妻の子の遺留分に相当する額の現金や資産を渡す内容にしておくか、代償金を払えるよう準備しておくことで、裁判沙汰を防ぐことができます。
対策3:生命保険を活用する
受取人を「現在の配偶者」や「後妻との子」に指定した生命保険に加入しておくのも有効です。
生命保険金は原則として「遺産分割の対象外(受取人固有の財産)」となるため、遺産分割協議を経ずに速やかに現金を受け取ることができます。残された家族の生活費や、万が一の際の遺留分支払いの原資(代償金)として活用できます。
まとめ
「家族だけで話し合えば大丈夫」と思っていても、法律上の手続きにおいては「先妻との子」も対等な権利を持つ相続人です。
亡くなった後に残されたご家族(後妻やそのお子さん)が苦労しないためにも、ご存じの段階で遺言書の作成をはじめとする相続対策を進めておくことが大切です。
「自分のケースではどのような遺言書を作ればいいか分からない」「遺留分の計算が不安」という方は、相続に強い弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

